開業したクリニックに最初の診療報酬が入るのは約2ヶ月後。その間の運転資金をどう備えるか、入金カレンダー・必要額の式・診療報酬債権の売却という選択肢まで、やさしく解説します。
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賞与や納税が重なる月。医療機器や電子カルテの更新。建物の改修や移転。 開業した直後や、事業を承継した直後も、支出が先に出ていきます。 クリニックから三百床規模の病院まで、診療科を問わずご相談いただけます。 必要な月に、必要な月数だけ。使い続ける必要はありません。
開業したその日から、スタッフの給料も家賃も発生します。ところが、保険診療の売上である「診療報酬」が口座に入るのは、開業からおよそ2ヶ月後です。この記事では、開業直後のクリニックが「お金が入らない2ヶ月」をどう乗り切るかを、中学生でも分かる言葉で整理します。
この記事でわかること
- 開業直後に「売上はあるのにお金がない」状態が生まれる仕組み
- 最初の入金日までに必要な運転資金の考え方(計算式つき)
- 運転資金が足りないときの選択肢と、診療報酬債権の売却という方法
なぜ開業直後は「売上はあるのにお金がない」のか
かんたんに言うと、保険診療は「ツケ払い」に近い仕組みだからです。
患者さんが窓口で払うのは、医療費の1〜3割ほどです。残りの7〜9割は、クリニックが「診療報酬」として後からまとめて請求します。この請求書のことを「レセプト」と呼びます。
レセプトは、診療した月の翌月10日までに、支払基金(社会保険診療報酬支払基金)や国保連(国民健康保険団体連合会)に提出します。そしてお金が振り込まれるのは、診療月の翌々月20日前後です(支払基金の場合。国保連は都道府県により異なり、概ね20日〜月末です)。
4月1日に開業した場合を例に、お金の動きを並べてみます。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 4月 | 診療スタート。窓口負担分だけが日々入金される |
| 5月10日まで | 4月分のレセプトを支払基金・国保連に請求 |
| 5月 | 4月分の給与・家賃・医薬品代などの支払い |
| 6月10日まで | 5月分のレセプトを請求 |
| 6月20日前後 | 4月分の診療報酬が入金(支払基金の場合) |
表のとおり、4月と5月の2ヶ月分の支払いは、診療報酬が1円も入らない状態で迎えます。しかも開業当初は患者数が少なく、窓口収入も控えめなことが多いです。くわしい入金の流れはサービス・仕組みのページでも図つきで説明しています。
最初の入金までに、いくら必要か
必要な運転資金は、次の式でざっくり見積もれます。
月の固定費 × 2〜3ヶ月分 − 窓口収入の見込み = 用意しておきたい運転資金
たとえば、月の固定費(人件費・家賃・リース料・医薬品や材料の仕入れ・水道光熱費など)が500万円のクリニックなら、
500万円 × 3ヶ月 = 1,500万円
が一つの目安になります。窓口収入が月100万円ほど見込めるなら、同じ3ヶ月分で 100万円 × 3ヶ月 = 300万円。差し引き 1,500万円 − 300万円 = 1,200万円ほど、という計算です。
「2ヶ月」ではなく「3ヶ月」で見ておくのがポイントです。最初の入金は6月20日前後ですが、6月分の給与はそれより前に払う場合が多いですし、査定や返戻(請求内容の確認で、入金が減ったり遅れたりすること)で予定どおり入らない月もあるからです。
開業資金というと、内装工事や医療機器など「目に見えるもの」に意識が向きがちです。工事の追加費用や備品の買い足しで運転資金が削られることも多いので、事業計画では「最初の診療報酬が入るまでの運転資金」を独立した項目にしておくことをおすすめします。
足りないときの選択肢を並べてみる
それでも運転資金が心もとない、という場合の選択肢は主に4つです。
- 自己資金・開業時の借入枠のうち運転資金部分: 開業時に金融機関から借りる枠に、運転資金分が含まれていれば、まずそれを使います。
- 支払いサイトの調整: 医薬品卸やリース会社と支払い時期を相談する方法。ただし相手のある話で、必ず応じてもらえるとは限りません。
- 追加の借入: 開業直後は実績がないため、追加の審査に時間がかかることがあります。
- 診療報酬債権の売却(診療報酬ファクタリング): すでに請求した(またはこれから発生する)診療報酬を受け取る権利を、入金日より前に売却して現金化する方法です。
4つ目の「診療報酬債権の売却」は、かんたんに言うと「2ヶ月後に入る予定のお金を、手数料を払って先に受け取る」仕組みです。借入ではなく売買なので、返済という考え方がなく、担保や保証人も不要です。当社の場合、手数料は3%〜(条件により変動し、お見積りで明示)、前払いは請求額の90%程度、ご契約後最短3営業日でお支払いします。ただし、初回は審査と支払基金・国保連への通知手続きがあるため、お時間をいただく場合があります。
開業直後でも、レセプト請求の実績をもとに検討できます。くわしくはご利用条件・手数料をご覧ください。
参考事例
※想定事例です。実在の医療機関の事例ではありません。
A内科クリニック(個人開業・想定)の場合
背景: 4月1日に開業。開業資金の多くを内装と検査機器に使い、運転資金として残したのは約600万円でした。月の固定費は約450万円。4月の患者数は想定の7割ほどで、窓口収入は月60万円にとどまりました。5月末の給与と6月初めの家賃・仕入れの支払いを考えると、6月20日前後の初回入金まで資金が持たない見込みでした。
やったこと: 開業前の4月から当社に相談し、必要書類を先に準備。5月10日に4月分のレセプト(保険請求額520万円)を請求した直後に審査と支払基金・国保連への債権譲渡通知(確定日付付き)の手続きを進め、4月分の請求額520万円分を売却する契約を結びました。
数字(掛け目90%・手数料3%と仮定):
- 前払い: 520万円 × 90% = 468万円(ご契約後、最短3営業日)
- 買取手数料: 520万円 × 3% = 15.6万円(消費税非課税)
- 残金: 520万円 − 468万円 − 15.6万円 = 36.4万円(6月20日前後の基金入金後に精算)
- 受取合計: 468万円 + 36.4万円 = 504.4万円
結果: 5月末の給与日より前に468万円が入金され、6月の支払いも手持ち資金で無理なくまかなえました。6月20日前後に4月分が支払基金から当社に入金され、残金36.4万円を受け取って精算。6月以降は患者数が伸び、7月からは売却を使わず、通常の入金サイクルで回せるようになりました。
※ 上記は理解を助けるためのモデルケース(想定事例)であり、実在の医療機関の事例ではありません。掛け目・手数料・日数は目安で、実際は審査により個別に決定します。
開業直後に診療報酬債権を売却するときの注意点
便利な方法ですが、いくつか知っておいてほしいことがあります。
- 審査があります: 保険医療機関の指定確認やレセプト請求実績、本人確認などを行います。開業直後でも検討できますが、希望どおりの条件にならない場合もあります。
- 初回は時間がかかります: 支払基金・国保連への通知手続きがあるため、初回は相談から入金まで2〜3週間が目安です。「給与日の1週間前」ではなく、余裕をもって相談するのが安心です。
- 通知先は支払基金・国保連のみ: 患者さんや取引先への通知はありません。
- 手数料はコストです: 受け取る額は請求額の100%ではありません。「いくら必要で、いつまでに必要か」を整理してから使うと、手数料のムダがありません。
いくら受け取れるかは資金調達シミュレーターで試算できます。
まとめ
開業直後のクリニックは、保険診療の「ツケ払い」の仕組みによって、最初の約2ヶ月間は診療報酬が入りません。この期間の固定費は、開業前に運転資金として別枠で用意しておくのが基本です。足りなくなったときは、自己資金・借入枠・支払いサイトの調整に加えて、診療報酬債権の売却という選択肢があります。売買なので返済の考え方がなく、担保・保証人も不要ですが、審査があり、手数料がかかります。早めに相談し、必要な分だけ使うのが上手な付き合い方です。
よくある質問
Q. 開業したばかりで決算書がありません。それでも相談できますか?
A. はい、ご相談いただけます。開業直後の場合は、保険医療機関の指定通知書やレセプトの請求実績などをもとに検討します。審査はありますので、まずはお問い合わせから状況をお知らせください。
Q. 最初の診療報酬が入る前、つまり請求前の段階でも売却できますか?
A. 売却の対象は、レセプト請求によって金額が確定した診療報酬債権が基本です。開業直後は、最初の請求(翌月10日まで)を終えてからのご案内になることが一般的です。開業前からご相談いただければ、請求後すみやかに進められるよう準備をお手伝いします。
Q. 1回だけ使って、あとは通常の入金サイクルに戻れますか?
A. はい、1回のみのご利用も可能です。開業直後の2〜3ヶ月だけ使い、患者数が安定したら通常のサイクルに戻す、という使い方ができます。継続利用の場合も、対象月や金額は個別契約で都度決めます。
開業前・開業直後のご相談も承ります
最初のレセプト請求前でも、資金計画の段階からご相談いただけます。いつ・いくら手当てできるかの見通しをお伝えします。

