診療報酬改定で収入の構造が変わり、物価高で支出が増える。そんなときに慌てて借入を増やす前に確認したい「資金繰り表・収入と支出の分解・打ち手の順番」の3つを、病院・クリニック向けにやさしく解説します。
動画の内容を文字で読む
賞与や納税が重なる月。医療機器や電子カルテの更新。建物の改修や移転。 開業した直後や、事業を承継した直後も、支出が先に出ていきます。 クリニックから三百床規模の病院まで、診療科を問わずご相談いただけます。 必要な月に、必要な月数だけ。使い続ける必要はありません。
「改定で思ったより収入が伸びない」「光熱費も材料費も人件費も上がった」。ここ数年、病院やクリニックの経営者からよく聞く言葉です。収入の仕組みが変わり、支出が増えると、資金繰りはじわじわ苦しくなります。この記事では、そんなときに慌てて借入を増やす前に、まず確認したい3つのことを、やさしく整理します。
この記事でわかること
- 診療報酬改定と物価高が、資金繰りにどう効いてくるのか
- まず確認したい3つのこと(資金繰り表・収入と支出の分解・打ち手の順番)
- 一時的な資金ギャップに診療報酬債権の売却を使うときの考え方と計算例
診療報酬改定と物価高は、資金繰りにどう効くのか
診療報酬とは、かんたんに言うと「保険診療の値段表」です。国(厚生労働省)が決め、原則として2年に1度見直されます。これが「診療報酬改定」です。点数の上げ下げだけでなく、「この加算を取るにはこの条件が必要」というルールも変わります。
改定の影響は、次のような形で資金繰りに出ます。
- 条件を満たせず、これまで取れていた加算が取れなくなる(収入が減る)
- 新しい加算の届出が遅れ、取れるはずのものを取り損ねる(収入が減る)
- 条件を満たすために人員や設備を増やす(支出が増える)
一方の物価高は、水道光熱費、医薬品・材料の仕入れ、給食や委託費、そして人件費の上昇として、毎月の支出をじわじわ押し上げます。保険診療の値段は自分で上げられないため、支出が上がった分をそのまま価格に転嫁できないのが、医療機関のつらいところです。
しかも、診療報酬は診療月の翌々月20日前後に入金されます(支払基金の場合。国保連は都道府県により概ね20日〜月末)。支出の増加は今月から、収入の変化は2ヶ月遅れで見える。このずれが、「気づいたら苦しかった」を生みます。
確認したいこと①:資金繰り表で「いつ・いくら」足りないかを見る
最初にやることは、損益計算書(もうかったかどうかの表)ではなく、資金繰り表(お金の出入りの表)を見ることです。
資金繰り表は、月ごとに「入るお金」「出るお金」「月末の残高」を並べた表です。難しく考えず、まずは3〜6ヶ月先まで作ってみてください。
- 入るお金: 診療報酬(2ヶ月前の診療分)、窓口収入、自費収入、その他
- 出るお金: 人件費、医薬品・材料、家賃・リース、水道光熱費、委託費、税金・社会保険料、借入の返済、設備投資
- 月末の残高: 前月の残高 + 入るお金 − 出るお金
これで、「赤字かどうか」ではなく「いつ、いくら足りないか」が見えます。大事なのは、足りない原因が 一時的なギャップ(賞与や納税、改定の届出待ちなど)なのか、構造的な赤字(毎月少しずつ減っていく)なのかを見分けることです。打ち手がまったく違うからです。
確認したいこと②:収入と支出を分けて、原因を1つずつ見る
資金繰り表で足りない月が見えたら、次は原因の分解です。「改定と物価高でなんとなく苦しい」のままでは、手の打ちようがありません。
収入側で確認すること
- 改定で変わった加算のうち、届出や条件の見直しで取れるものはないか(算定漏れの確認)
- 返戻・査定が増えていないか(請求内容の確認で入金が減ったり遅れたりしていないか)
- 患者数・診療単価の変化は、季節要因か、構造的なものか
支出側で確認すること
- 医薬品・材料の仕入れ先や発注量の見直し余地はないか
- 水道光熱費、委託費(清掃・警備・給食など)の契約条件は見直せないか
- 人件費は「上がった」のではなく「必要な投資」か。人員配置にムダはないか
確認したいこと③:打ち手の「順番」を決める
原因が見えたら、打ち手を順番に並べます。おすすめの順番は次のとおりです。
- すぐできる改善: 算定漏れの解消、返戻・査定への対応、発注や契約の見直し
- 公的な制度の確認: 補助金・助成金、納税の分割や猶予の相談窓口など
- 一時的なギャップを埋める資金: 改善の効果が出るまでの「つなぎ」
- 中長期の資金: 大型投資や構造改善のための借入など
ここで注意したいのは、3番目の「つなぎ」を、借入だけでまかなおうとしないことです。借入枠は、4番目の中長期の資金のために残しておきたいからです。
一時的なギャップを埋める方法の一つが、診療報酬債権の売却(診療報酬ファクタリング)です。かんたんに言うと、2ヶ月後に支払基金・国保連から入る予定の診療報酬を、手数料を差し引いて先に受け取る仕組みです。借入ではなく売買なので返済という考え方がなく、担保・保証人も不要です。当社の場合、手数料は3%〜(条件により変動。お見積りで明示)、前払いは請求額の90%程度、ご契約後最短3営業日でお支払いします(初回は審査・通知手続きのため時間をいただく場合あり)。改善の効果が出るまでの数ヶ月を「つなぐ」使い方が向いています。
ただし、手数料というコストはかかります。毎月使い続ければ、その分だけ手元に残るお金は減ります。「つなぎ」を「依存」にしないために、使う前に 期限(何ヶ月のつなぎか)、出口(その間に何を改善するか)、確認の場(毎月、資金繰り表を見直す日)の3つを決めておくことをおすすめします。くわしい仕組みはサービス・仕組みのページをご覧ください。
参考事例
※想定事例です。実在の医療機関の事例ではありません。
E病院(医療法人・想定)の場合
背景: 月の保険請求額は約6,000万円。改定で一部の加算の条件が変わり、届出の準備に2ヶ月かかる間、その加算分の収入が減りました。同時に光熱費と材料費の上昇で、月の支出が以前より約300万円増加。資金繰り表を作ると、3ヶ月後の月末残高が給与の支払いに足りなくなる見込みでした。
やったこと: まず、①加算の届出を急ぎ、返戻の多かった項目を見直しました。②医薬品・材料の仕入れ条件と清掃委託の契約を見直し、月の支出を約120万円減らしました。それでも改善の効果が入金に反映されるのは3〜4ヶ月先です。その間のつなぎとして、③直近1ヶ月分の診療報酬債権を売却し、当面の資金を確保しました。理事会の議事録を準備し、支払基金・国保連への債権譲渡通知を行いました。
数字(掛け目90%・手数料3%と仮定):
- 買取債権額: 6,000万円 × 1ヶ月分 = 6,000万円
- 前払い: 6,000万円 × 90% = 5,400万円(ご契約後、最短3営業日)
- 買取手数料: 6,000万円 × 3% = 180万円(消費税非課税)
- 残金: 6,000万円 − 5,400万円 − 180万円 = 420万円(基金・国保連入金後に精算)
- 受取合計: 5,400万円 + 420万円 = 5,820万円
結果: 前払いの5,400万円で、改善の効果が出るまでの給与と支払いをまかないました。4ヶ月目には加算の届出が通り、支出の見直しも効いて月の残高が安定。売却は2回で終了し、その後は通常の入金サイクルに戻りました。資金の手当てと同時に支出側の見直しを進めたことで、「つなぎ」がつなぎで終わった例です。
※ 上記は理解を助けるためのモデルケース(想定事例)であり、実在の医療機関の事例ではありません。掛け目・手数料・日数は目安で、実際は審査により個別に決定します。
まとめ
診療報酬改定は収入の仕組みを変え、物価高は支出を押し上げます。しかも収入の変化は2ヶ月遅れで見えるため、気づいたときには苦しくなっていることがあります。まず確認したいのは、①資金繰り表で「いつ・いくら」足りないかを見る、②収入と支出を分けて原因を1つずつ見る、③打ち手の順番を決める、の3つです。一時的なギャップには、診療報酬債権の売却のような「つなぎ」が選択肢になります。売買なので返済という考え方がなく、担保・保証人も不要ですが、審査と手数料があります。期限と出口を決めて使うことが、「つなぎ」を「依存」にしないコツです。当社では、資金のご相談と一緒に「経営改善までのロードマップ」をご提案しています。ご相談はお問い合わせからどうぞ。
よくある質問
Q. 改定で収入が減った状態でも、診療報酬債権の売却は利用できますか?
A. はい、ご相談いただけます。審査では保険医療機関の指定確認やレセプトの請求実績などを確認します。赤字決算でも請求実績をもとに検討しますが、条件は個別に決まります。
Q. 資金繰り表を作ったことがありません。どこから始めればよいですか?
A. まずは3ヶ月分、「入るお金」「出るお金」「月末残高」の3行だけで構いません。診療報酬は「2ヶ月前の診療分が入る」ことだけ忘れずに。いくら受け取れるかの目安は資金調達シミュレーターでも試算できます。
Q. 資金だけでなく、支出の見直しも相談できますか?
A. はい。当社は医療経営支援グループの一員として、医薬品・医療材料の調達や清掃・メンテナンス、人材、経営コンサルティングなどのご相談も受けています。資金の手当てと支出の見直しをあわせて進めることで、一時的な「つなぎ」で終わらせることを目指します。
診療報酬債権の買取について、無料でご相談いただけます
手数料3%〜・掛け目90%程度・最短3営業日。いくら、いつ受け取れるかを具体的にお見積りします(審査あり)。

