医療機関における資金繰り表の作り方を解説します。保険診療特有の入金ズレを把握し、3ヶ月先の手元現金を予測する方法や不足時の対策がわかります。
この記事でわかること
- 医療機関で資金繰り表の作成が欠かせない理由
- 初めてでも迷わずに作れる資金繰り表の作成手順
- 3ヶ月先の資金不足を予測したときの具体的な解決策
なぜ医療機関に資金繰り表が必要なのか
医療機関の経営を安定させるには、資金繰り表による現金の把握が欠かせません。利益が出ていても手元の現金が底をつくと、日々の支払いができなくなるためです。
一般企業と異なり、保険医療機関の収入は現金化までに時間がかかります。窓口での自己負担金を除くと、診療報酬の多くは社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会から支払われます。社会保険診療報酬支払基金の公表資料によると、診療報酬は診療月の翌月10日までに請求し、入金は翌々月下旬となります。
つまり、診療行為を行ってから入金まで約2ヶ月のズレが生じる仕組みです。その間も職員の給与や医薬品の仕入れ代金、テナント賃料などの固定費は毎月発生します。売上と実際の入金時期が離れているため、帳簿上の黒字と手元の残高が一致しません。
資金繰り表とは、かんたんに言うと「いつ、いくらの現金が入って、いくら出ていくか」を記録する予定表です。3ヶ月先の現金の動きをあらかじめ見える化しておけば、手元の資金が不足する時期を事前に把握できます。
早めに手元の現金不足に気づくことができれば、慌てることなく対策を選べます。経営の不安を減らして診療に集中するためにも、資金繰り表の作成は有効な手段です。
医療機関の資金繰り表を作る3つのステップ
資金繰り表の作成は、手順を整理すれば難しくありません。日本政策金融公庫などの公的金融機関でも、初心者向けの資金繰り表フォーマットが案内されています。まずは以下の3つのステップで進めましょう。
1. 現在の手元資金を正確に把握する
最初に行う作業は、現時点で手元にある現預金の残高を確認することです。通帳の記帳を行い、当座預金や普通預金、院内にある小口現金をすべて合算します。
この金額が資金繰り表の出発点となる「前月末繰越残高」になります。ここが不正確だと今後の見通しもズレてしまうため、最新の実績額を正確に記入してください。
2. 今後3ヶ月の入金予定を書き出す
次に向こう3ヶ月間に入ってくる現金の予定を書き出します。医療機関の入金は、主に「窓口収入(患者の自己負担分)」と「保険請求分(支払基金・国保連からの入金)」の2つです。
保険請求分は、すでに提出したレセプト(診療報酬明細書)の金額をもとに計算します。前々月や前月に請求した確定額を、入金予定月へ正確に当てはめていきましょう。自由診療や健康診断の収入がある場合は、過去の実績を参考に控えめな金額で見積もることが安全です。
3. 今後3ヶ月の出金予定を整理する
入金予定を記入したら、次は出ていくお金のスケジュールを整理します。医療機関の支出は、人件費、医薬品や医療材料の仕入れ、テナント家賃、水道光熱費などが中心です。
さらに忘れやすい支出として、半期ごとの賞与や年次で発生する労働保険料、消費税などの各種税金があります。また、医療機器のリース料や金融機関からの借入金がある場合は、その返済額も期日ごとに細かく記入します。
入金予定の合計から出金予定の合計を差し引き、前月末の残高に足すと「月末想定残高」が算出されます。この残高がマイナスになりそうな月がないかを点検することが大切です。
資金繰り表に盛り込むべき重要項目
資金繰り表を機能させるためには、お金の流れを用途ごとに分類して記録する必要があります。中小企業庁などの指針でも、資金の動きは大きく3つに分けることが推奨されています。
経常収支
経常収支とは、かんたんに言うと「本来の医業活動によって生じる現金の出入り」のことです。日々の診療がしっかり現金を生み出しているかを測る基準になります。
- 経常収入:窓口負担金、支払基金からの診療報酬、国保連からの診療報酬、自費診療収入
- 経常支出:給与・賞与・法定福利費、医薬品費、診療材料費、外注検査費、賃借料、光熱費など
経常収入から経常支出を引いた金額が毎月プラスを維持できていれば、本業の収支は健全といえます。
経常外収支
経常外収支とは、かんたんに言うと「日々の診療とは直接関係のない一時的な現金の出入り」のことです。突発的に大きな金額が動くケースが多いため、資金繰りに強い影響を与えます。
- 経常外収入:医療機器の売却代金、行政からの補助金や助成金など
- 経常外支出:内視鏡やレントゲンなどの機器購入費、クリニックの改装費用、法人税や消費税など
一時的な設備投資を自己資金だけで賄おうとすると、手元の現金が急激に減る要因になります。
財務収支
財務収支とは、かんたんに言うと「資金調達や金融機関への返済に関する現金の出入り」のことです。金融機関とどのような取引を行っているかを表します。
- 財務収入:銀行融資による借入金の着金など
- 財務支出:借入金の元金返済額など
利息の支払いは経常支出に含め、元金の返済はこちらの財務支出に計上して区別することが基本ルールです。
3ヶ月先の資金不足に気づいたときの対策
資金繰り表を作成すると、「2ヶ月後や3ヶ月後に手元資金が大きく減る」と事前に気づくことができます。残高の減少が見込まれる場合は、早い段階で次の対策を講じましょう。
支払時期の交渉と費用の見直し
最も早く取り組める対策は、出ていくお金を抑えたり支払期日を調整したりすることです。固定費の中に削減できる無駄な経費がないかをすぐに点検します。
医療機器の納入業者や医薬品卸に対して、支払期日の延長を相談できる場合もあります。ただし、信頼関係に影響することもあるため、資金繰り表を示しながら丁寧に対話を重ねることが重要です。
金融機関への融資相談
運転資金の不足が予測されるときは、取引先銀行や日本政策金融公庫などの金融機関へ早めに相談します。融資の審査には通常数週間から1ヶ月程度かかるため、資金が枯渇する直前では間に合わない恐れがあります。
資金繰り表を提出して借入金の使い道や返済の見通しを論理的に説明できれば、金融機関からの信用を得やすくなります。
診療報酬債権の早期資金化
金融機関からの融資は審査に日数を要し、希望の期日に間に合わないことも考えられます。また、これ以上負債を増やしたくないと考える経営者の方も少なくありません。
そのような場面では、すでに行った診療の対価である診療報酬を早期に現金化する「診療報酬債権の買取(ファクタリング)」が選択肢となります。借入を増やすことなく手元の流動性を確保できるため、一時的な資金ギャップを埋める手段として活用されています。
診療報酬債権の買取(ファクタリング)という選択肢
診療報酬債権の買取とは、かんたんに言うと「支払基金や国保連から後日入金される権利を専門会社に売却して、予定より早く現金を受け取る仕組み」です。
当社のサービスは債権の売買(譲渡)契約であり、融資や借入ではありません。そのため、負債を増やすことなく手元の運転資金を確保できます。契約にあたって担保や保証人は不要であり、償還請求権や買戻し義務もありません。万が一、請求先の経営破綻等により債権が回収不能となった場合でも、お客様に返還を求めることはありません。当社は貸金業者ではないため、利息が発生することもありません。
資金調達にかかる手数料は3%〜で、審査条件により変動しますが、お見積り時に明確な金額を提示いたします。また、買取手数料は消費税法上、非課税取引として扱われます。
掛け目(前払いする割合)は90%程度となり、買取上限は保険請求額の最大6ヶ月分まで対応可能です。ご契約後は最短3営業日で買取代金をお振込みいたします。ただし、ご利用にあたっては所定の審査があり、事業の実態に応じて引き受けを判断いたします。審査の結果によってはご利用いただけない場合もあります。
手続きは、支払基金や国保連に対して債権譲渡の通知を行う「3者間方式」で進めます。患者様や取引先の医療機器ディーラー等に通知されることはありません。対象となる医療機関は、病院、クリニック、歯科医院です(調剤薬局や介護事業者の方は別途ご相談となります)。
手数料や受取額の目安を確認したい方は、資金調達シミュレーターをご活用ください。具体的な条件については料金案内でもご確認いただけます。
参考事例
※想定事例であり、実在の医療機関の事例ではありません。
背景
内科クリニックを運営するB院長は、資金繰り表を作成したところ、2ヶ月後に手元資金が一時的に減少することに気づきました。夏期の賞与支払いとクリニックの空調設備修繕が同じ月に重なり、月末残高が不足する予測となったためです。
銀行融資を申し込むには期日までの時間が足りず、新たな借入を増やしたくないという考えもありました。そこで、すでに行っている保険診療の診療報酬債権を早期に資金化する方法を検討しました。
やったこと
B院長は、当社の診療報酬債権買取サービスへ相談を行いました。直近のレセプト請求額をもとに事前審査を申し込み、必要書類を提出して契約を締結しました。対象とした診療報酬債権は1ヶ月分の1,000万円です。
数字
- 債権額:1,000万円
- 前払い額(掛け目90%):1,000万円 × 90% = 900万円(最短3営業日で受取)
- 買取手数料(手数料率3%):1,000万円 × 3% = 30万円
- 残金(基金入金後):1,000万円 − 900万円 − 30万円 = 70万円
- 受取合計額:1,000万円 × 97% = 970万円
結果
B院長は、契約後すぐに前払い分の900万円を手元資金に充当できました。これにより、スタッフへの賞与と空調設備の修繕代金を遅れることなく支払うことができました。後日、支払基金から精算金の70万円が入金され、一時的な資金繰りの課題を無事に乗り越えることができました。
※ 上記は理解を助けるためのモデルケース(想定事例)であり、実在の医療機関の事例ではありません。掛け目・手数料・日数は目安で、実際は審査により個別に決定します。
まとめ
医療機関の経営では、診療報酬の入金ズレを考慮した資金繰り表の運用が不可欠です。3ヶ月先の収支を見える化することで、急な資金不足に対しても慌てずに準備を進められます。
手元資金の減少が予測される場合は、支出の圧縮や金融機関への相談など、状況に合わせた対策を早期に実行しましょう。借入を増やさずに短期間で資金を確保したいときは、診療報酬債権の早期資金化も有力な手段となります。
資金繰りに関するご相談や詳しい資料請求は、お問い合わせ窓口よりお気軽にお寄せください。
よくある質問
Q1. 資金繰り表は何ヶ月先まで作ればよいですか?
最低でも3ヶ月先、可能であれば半年から1年先まで作成することをおすすめします。医療機関は診療から入金まで約2ヶ月のズレがあるため、3ヶ月先を見通しておかないと急な資金ショートに対応しづらくなるからです。
Q2. 診療報酬ファクタリングを利用すると患者に知られますか?
患者様に知られることはありません。当社が行う3者間方式の手続きは、支払基金や国保連に対して債権譲渡の通知を行うものです。患者様や院外の取引業者に通知や連絡がいくことはありませんので、安心して診療を継続していただけます。
Q3. 赤字決算でも診療報酬債権の買取は利用できますか?
赤字決算であっても申し込みは可能です。当社の審査では、医療機関の財務状況だけでなく、支払基金や国保連に対するレセプト請求の実態を重視します。ただし所定の審査があるため、事業の実態に応じて対応を判断いたします。
Q4. 手数料に消費税はかかりますか?
診療報酬債権の買取手数料に消費税はかかりません。国税庁の法令解釈により、金銭債権の譲受その他の取引に係る手数料は非課税と定められています。見積書に記載された手数料率以外の消費税が加算されることはありません。
診療報酬債権の買取について、無料でご相談いただけます
手数料3%〜・掛け目90%程度・最短3営業日。いくら、いつ受け取れるかを具体的にお見積りします(審査あり)。

