医療法人の役員報酬は事業年度開始から3ヶ月以内に決定する必要があります。定期同額給与のルールや期中の変更リスク、医院の資金繰りを圧迫しない適正な報酬設定のポイントを分かりやすく解説します。
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診療報酬は、診療した月の翌月十日までにレセプトで請求します。 支払基金からの入金は、その翌月二十日前後。国保連は都道府県によって異なります。 つまり診療から入金まで、およそ五十日から八十日かかります。この間も、人件費や仕入れの支払いは続きます。 当社は、この期間を埋めるために診療報酬債権を買い取ります。
この記事でわかること
- 医療法人の役員報酬を事業年度開始から3ヶ月以内に決めるべき法的な理由
- 期首3ヶ月を過ぎてから役員報酬を変更した際に生じる税務上の重大なリスク
- 役員報酬を固定したあとに生じる急な資金不足を安全に解決するための手段
医療法人を経営する理事長にとって、役員報酬の金額設定は毎年の頭を悩ませる大きな課題です。
「今期は利益が出そうだから役員報酬を増やしたい」
「手元のキャッシュが減ってきたので、いったん役員報酬を下げて乗り切りたい」
このように考える院長先生も多いのではないでしょうか。しかし、医療法人の役員報酬はいつでも自由に変更できるわけではありません。法人税の法律によって、変更できる時期には厳格な期日制限が設けられています。
この記事では、役員報酬を決める「期首3ヶ月ルール」の仕組みと、医院の資金繰りを守るための考え方について詳しく解説します。
医療法人の役員報酬は「事業年度開始から3ヶ月以内」に決める
結論からお伝えしますと、医療法人の役員報酬の金額は、事業年度が始まってから3ヶ月以内に改定しなければなりません。
国税庁の定めによると、法人が役員に支給する給与を経費として認めるためには、定期同額給与の要件を満たす必要があります。定期同額給与とは、かんたんに言うと「毎月同じ金額で支払われる役員のお給料」のことです。
法人税法施行令第69条第1項第1号イでは、役員給与の通常改定は「会計期間開始の日から3月を経過する日までにされた改定」と定められています。たとえば3月決算の医療法人であれば、新年度の始まる4月1日から3ヶ月以内、つまり6月30日までに改定を決議する必要があります。
医療法人の場合、役員報酬の総額は定時社員総会で決議し、各理事への配分は理事会で決定するのが一般的な法的手続きとなります。この総会や理事会での決議と議事録の作成を、必ず期首から3ヶ月以内に完了させなければなりません。
期首から3ヶ月の期限を1日でも過ぎてから増額改定を行うと、増額した部分の金額は損金不算入となります。損金とは、かんたんに言うと「税金の計算上で経費として差し引くことができるお金」のことです。損金として認められないと、その分だけ医療法人に重い法人税が課されることになります。
役員報酬を途中で自由に変えられない「定期同額給与」のルール
なぜ、税務署は役員報酬を毎月同額に固定し、途中で自由に変更することを禁止しているのでしょうか。その理由は、役員報酬を自由に変更できると、法人税を意図的に減らす利益操作が可能になってしまうからです。
期末近くになって「利益がたくさん出そうだから、役員報酬を一時的に増やして利益をゼロにしよう」といった節税を防ぐ目的があります。そのため、法人税法第34条第1項第1号において、原則として事業年度を通じて毎月同額で支払うことが義務付けられています。
事業年度の途中で役員報酬を変更できる例外は、法律上ごく限られたケースのみです。
- 臨時改定事由:役員の職制上の地位の変更や、職務内容の重大な変更があった場合(法人税法施行令第69条第1項第1号ロ)
- 業績悪化改定事由:法人の経営状況が著しく悪化し、取引先や銀行との関係上やむを得ず減額する場合(法人税法施行令第69条第1項第1号ハ)
ここで特に注意が必要なのは、「業績悪化による減額」のハードルが非常に高いという点です。単に「目標の売上に届かなかった」「手元の預金が心細い」という程度の理由では、税務署に正当な改定として認められません。
客観的に見て事業の継続が危ぶまれるような深刻な財務悪化でない限り、期中の減額は否認されるおそれがあります。さらに、一度減額したあとに業績が持ち直したからといって、期中に元の給与額へ戻すことは認められていません。期首の報酬設定は、1年間の法人の命運を左右する極めて重い決断なのです。
高すぎても低すぎても危険!役員報酬と資金繰りのバランス
役員報酬の金額を決定する際は、理事長個人の手取り額だけでなく、医療法人全体の資金繰りを最優先に考える必要があります。
役員報酬を高めに設定しすぎると、毎月のキャッシュアウト(かんたんに言うと医院の口座から出ていく現金の支出)が固定化されます。保険診療による収入は、診療を行ってから窓口で支払われる一部負担金を除き、社会保険診療報酬支払基金(支払基金)や国民健康保険団体連合会(国保連)から入金されるまでに約2ヶ月のタイムラグがあります。
患者数が季節要因などで一時的に減少した場合でも、決定した役員報酬は期末まで毎月決まった金額を支払わなければなりません。役員報酬の設定が高すぎると、運転資金が枯渇し、職員の給与や医薬品の仕入れ代金の支払いに支障をきたす原因になります。
反対に、法人に現金を残したいからといって役員報酬を極端に低く設定しすぎるのも考えものです。理事長個人の生活費や住宅ローンの支払いが苦しくなり、個人資産から法人へ資金を貸し付けるような事態に陥りかねません。
適正な報酬額を決めるためには、前年度の試算表をもとに、今後1年間の診療報酬収入と固定費を綿密にシミュレーションすることが欠かせません。年間の資金計画に不安がある場合は、事前に診療報酬ファクタリングの手数料シミュレーターなどを活用し、万が一のキャッシュ不足に備えた試算を行っておくと安心です。
期首3ヶ月を過ぎて資金繰りが悪化したときの対処法
もし期首3ヶ月の決定期間を過ぎたあとに、急激な経営環境の変化で資金繰りが苦しくなった場合、どのような対策を取るべきでしょうか。
前述のとおり、安易に理事長の役員報酬を減額することは税務上の大きなリスクを伴います。減額分が定期同額給与と認められなければ、過年度の税務調査で追徴課税を受け、さらに資金を失う事態になりかねません。
そのため、期中に手元の現金が不足した場合は、支出を無理に削るのではなく、外部から適切に運転資金を確保することが基本となります。
主な資金確保の選択肢としては、次のような方法が挙げられます。
- メインバンクや日本政策金融公庫への融資の申し込み
- 保険会社等の契約者貸付制度の利用
- 2ヶ月後に入金される診療報酬債権の早期現金化(ファクタリング)
金融機関からの融資は金利面で有利な場合が多い一方、申し込みから審査、着金までに数週間から数ヶ月の時間がかかります。税金の未納や直近の赤字決算がある場合は、審査に通らないケースも少なくありません。
「来月末の職員の賞与支払いに数十万円足りない」「医療機器が急に故障して修繕費がすぐに必要」といったスピードを要する資金需要には、融資以外の柔軟な資金調達手段を確保しておくことが極めて大切です。
役員報酬を守りながら急な資金不足を乗り切る診療報酬債権の買取
期首に決めた役員報酬の水準を維持しつつ、短期的な資金繰りの危機を乗り切る現実的な手段として、診療報酬債権の買取サービス(ファクタリング)があります。
診療報酬債権とは、かんたんに言うと「医療機関が支払基金や国保連に対して持っている、後から診療報酬を受け取ることができる権利」のことです。通常であれば請求から入金までに約2ヶ月かかるこの債権を、期日より前に現金化することができます。
当社が提供するサービスは、診療報酬債権の正当な売買(譲渡)契約であり、借入ではありません。そのため、負債を増やすことなく手元の流動性を高めることが可能です。
当社のサービス概要と利用条件は以下のとおりです。
- 買取対象:病院、クリニック、歯科(調剤薬局や介護事業者はご相談)
- 手数料:3%〜(医院の請求規模や診療科等の条件により変動し、見積りで明示します)
- 掛け目:90%程度
- 買取上限額:保険請求額の最大6ヶ月分まで
- 入金スピード:ご契約完了後、最短3営業日でお振込み
- 契約形態:支払基金や国保連へ債権譲渡通知を行う「3者間方式」(患者様や取引先への通知は一切ありません)
- 費用処理:債権の買取手数料は消費税非課税
当社は貸金業者ではないため、不動産担保や個人保証人は一切不要です。また、万が一支払基金の減点等により請求額に差異が生じた場合でも、お客様が買い戻す必要のない「償還請求権なし(ノンリコース)」の契約となっております。償還請求権とは、かんたんに言うと「回収できなかった代金を後から請求される権利」のことです。
役員報酬を無理に削って税務リスクを冒す前に、自院が保有する資産である診療報酬を活用した資金繰りの改善をぜひご検討ください。サービスの詳細や見積りの流れについては、料金・システムのご案内ページで詳しく解説しています。
参考事例
※想定事例であり、実在の医療機関の事例ではありません。
背景
内科クリニックを経営するA院長は、事業年度開始直後の社員総会において、前期の好業績を反映し自身の役員報酬を月額120万円から150万円へ増額改定しました。
しかし改定から4ヶ月後、近隣に競合クリニックが開業した影響で外来患者数が20%減少しました。毎月の社会保険料や役員報酬の支払いは変わらないため、医院の口座残高は毎月50万円ずつ減少する事態に陥りました。
役員報酬を期中に下げることも検討しましたが、顧問税理士から「現在の状況では法人税法上の業績悪化改定事由に該当せず、税務リスクが高すぎる」と反対されました。3ヶ月後に迫る看護師の冬期賞与(合計240万円)を支払うための現金が確実に不足する見通しとなり、早急な対策が必要でした。
やったこと
A院長は、負債を増やさずに短期間で資金を用意するため、当社へ診療報酬債権の買取を申し込みました。審査を経て、翌月入金予定の保険診療報酬280万円分の債権譲渡契約を締結しました。
数字の動き(式つき)
- 対象とする診療報酬請求額:2,800,000円
- 掛け目:90%
- 買取基準額:2,800,000円 × 90% = 2,520,000円
- 手数料率:3%(非課税)
- 買取手数料額:2,520,000円 × 3% = 75,600円
- 契約後最短3営業日で口座に入金された金額:
2,520,000円 - 75,600円 = 2,444,400円
- 後日、支払基金から当社へ入金があった際、留保されていた残り10%分(280,000円)から精算手続きを実施
結果
ご契約から4営業日でA院長の口座に244万4,400円の事業資金が入金されました。これにより、役員報酬を減額して税務トラブルを招くことなく、看護師への賞与を予定どおり期日に満額支給することができました。
その後、Web問診の導入や診療時間の見直しにより患者数は回復し、キャッシュフローは正常化しました。A院長は「期首に決めた役員報酬を守りながら、安全に賞与資金を確保できて本当に助かりました」と安堵されていました。
医院ごとの調達可能額や具体的なシミュレーションについては、お問い合わせ窓口よりお気軽にご相談いただけます。
※ 上記は理解を助けるためのモデルケース(想定事例)であり、実在の医療機関の事例ではありません。掛け目・手数料・日数は目安で、実際は審査により個別に決定します。
まとめ
医療法人の役員報酬は、事業年度開始から3ヶ月以内に決定し、原則として1年間は同額を支給し続けなければなりません。期首を過ぎてからの安易な増額や減額は、法人税法上の定期同額給与の要件から外れ、損金不算入による追徴課税を招く危険性があります。
適正な役員報酬を設定するためには、診療報酬が入金されるまでの2ヶ月のズレを意識し、余裕を持った資金計画を立てることが不可欠です。
万が一、期首3ヶ月を過ぎたあとに資金繰りが悪化した場合は、役員報酬を変更するのではなく、診療報酬債権の買取といった負債にならない資金調達手段を検討することをおすすめします。
よくある質問
Q. 期首から3ヶ月を過ぎてから役員報酬を増額した場合はどうなりますか?
A. 期首から3ヶ月を過ぎて増額改定を行った場合、増額前の金額を超える部分の支給額は損金(経費)として認められなくなります。その結果、法人税の課税対象所得が増加し、追加の法人税を納める必要が生じます。必ず期首3ヶ月以内の社員総会および理事会で改定を決議してください。
Q. 資金繰りが厳しいので理事長の報酬を一時的にゼロにすることは可能ですか?
A. 原則として認められません。定期同額給与のルールがあるため、正当な理由なく支給額をゼロにすると、期首からの給与全体が定期同額給与とみなされなくなるリスクがあります。銀行とのリスケジュール(返済猶予)交渉など、客観的に極めて深刻な業績悪化事由が存在しない限り、期中の変更は税務上避けるべきです。
Q. 診療報酬ファクタリングを利用すると、患者やスタッフに知られてしまいますか?
A. 知られることは一切ありません。当社のサービスは、社会保険診療報酬支払基金および国民健康保険団体連合会に対して債権譲渡通知を行う3者間方式です。手続きは公的機関との間でのみ進められるため、患者様や勤務医、看護師などのスタッフ、取引先企業に利用の事実が伝わる心配はありません。
Q. 診療報酬債権の買取にはどのような審査がありますか?
A. 当社独自の審査基準に基づき、毎月の保険診療報酬の請求実績や入金履歴、医療機関の継続性などを確認いたします。融資ではありませんので、担保や保証人は不要であり、赤字決算や税金の納付猶予中であっても事業の実態に応じて柔軟に対応しております。ただし審査の結果、ご希望に添えない場合もございますのであらかじめご了承ください。
診療報酬債権の買取について、無料でご相談いただけます
手数料3%〜・掛け目90%程度・最短3営業日。いくら、いつ受け取れるかを具体的にお見積りします(審査あり)。

